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最高裁判所大法廷 昭和24年(新れ)423号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人金昆用の上告趣意第一点について。

水産動植物の蕃殖保護をはかることは水産業のために必要なことであるから、これを濫獲し、又はこれが蕃殖を妨げるような手段でこれを採捕することを禁止するのは、公共の福祉の要請として当然である。漁業法及び漁業法施行規則において、爆発物又は有毒物を使用して水産動植物を採捕することを禁止しているのは、右の趣旨に出たことである。そうしてこのような禁止の効果を確実にし取締を徹底させるためには、右のような手段による採捕の行為を禁止するのみならず、この禁止を犯して採捕された水産動植物を所持することをも禁止し処罰する必要がある。のみならずこのような方法によって斃死した水産動植物は、食用として人体に有害な場合もあるので、衛生上からその所持を禁止する必要もないとは言えない。漁業法施行規則四七条は、以上のような趣旨により、爆発物又は有毒物を使用して採捕した水産動植物の所持を禁止しているのであるから、この規定は公共の福祉の要請に基くものと認められる。なるほど個々の場合についてみれば、右の水産動植物の所持の禁止が無用のことのように思われる場合もあろうが、これを全体として高い立場から観れば、右の禁止規定が公共の福祉のために必要なものであること明らかである。従って所論のようにこの規定を憲法一三条に違反するものということはできない。論旨は理由がない。

同第二点について。

論旨は量刑不当の主張であるから適法な上告理由とならない。

右の次第で本件については刑訴四〇五条所定の上告の理由がないこと明らかであるのみならず、同四一一条を適用すべきものとも認められないから、同四〇八条に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上登 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介)

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